ダブルワークをするなら知っておきたい保険の加入条件と注意点

近年、2か所以上の会社に勤務する、ダブルワークという道を選ぶ方が増えています。

しかし、複数の会社に属することになるため「社会保険はどちらの会社でも加入できる?」「どうすれば失業保険を受けられる?」「ダブルワークをする場合、気を付けるべき点は?」などの疑問を持たれるかもしれません。

そこで今回は、ダブルワークをするなら知っておきたい仕事に関連した4つの保険と、注意すべき点をご紹介します。これからダブルワークを始める方もぜひ参考にしてみてください。

 

ダブルワークをするなら知っておきたい4つの保険

事故や病気などの不測の事態や、育児・介護といったライフイベント、また老後の生活で頼りになるのが、「労働災害補償保険(労災保険)」「雇用保険」「社会保険(健康保険・厚生年金保険)」です。

しかし、その適用を受けるためには加入条件を満たし、適切な保険料を納付しておかなければなりません。

ここでは、4つの保険の概要や加入・給付の条件、ダブルワークを行う際に気をつけておきたい点をご紹介します。

労働災害補償保険(労災保険)

労災保険は、労働者が業務中や通勤中に負傷したり死亡したりした場合に、本人またはその家族に補償金を給付する保険です。

労災保険の加入条件

労災保険に加入できるのは、労働基準法第9条で定義されている労働者、つまり「職業の種類を問わず、事業に使用される者で、賃金を支払われる者」です。正社員に限らず、アルバイトやパートタイマーの方も加入できます。

労災保険料

労災保険料は事業主が全額負担するため労働者の負担はありません。

労災保険の給付

労災保険が補償するのは「業務災害」と「通勤災害」です。

「業務災害」は、業務が原因となって発生した負傷、疾病、障害、死亡が保険給付の対象となりますが、判断の基準として『業務起因性』と『業務遂行性』の両方が認められなければなりません。

『業務起因性』とは、その業務に従事していなければ災害は発生しなかった、またその業務に従事していればそのような災害の発生の可能性があるだろうと認められることです。つまり業務と災害の間に因果関係を示すものといえるでしょう。

『業務遂行性』とは、労働者が労働契約にもとづいて、事業主の支配下にある状態のことです。

「通勤災害」は、通勤による負傷、疾病、傷害、死亡が保険給付の対象となります。通勤とは住居と就業場所の間を往復することで、就業場所から別の就業場所への移動も通勤に含まれます。

原則として、仕事帰りに友人宅に立ち寄るなど移動の経路を逸脱した場合は、その逸脱したあとの移動は通勤と認められないので注意しなければなりません。

しかし、以下のような日常生活上必要な行為については、通勤経路からの逸脱また移動を中断している間は通勤となりませんが、通常の経路に戻った後の移動は再び通勤と認められます。

  • 日用品の購入
  • 職業訓練や学校などで教育を受ける行為
  • 選挙権の行使
  • 病院または診療所で診察や治療を受ける
  • 要介護にある配偶者、子、父母等の介護

法改正でダブルワーカーへの給付金と労災認定が充実

令和2年9月1日から施行された改正法により、休業した場合の給付額と労災認定の範囲が見直されました。

例えば、ダブルワーカーの方がA社とB社に勤めていて、A社でケガをした場合はA社の労災保険が使われます。休業補償給付は、過去3カ月の平均賃金をもとに計算されますが、A社だけではなくB社での賃金も含めて計算されるようになりました。

また、過重労働やストレスなど、仕事での負荷により脳・心臓疾患や精神障害を発症した場合は、以前はA社とB社それぞれの労働時間やストレスとなる状況を個別に検討していました。

しかし今回の法改正により、それぞれの勤務先ごとの勤務状況で労災認定できない場合は、2つ目の会社の勤務状況を考慮して、労災認定できるかどうか判断できるようになっています。

労災保険の法改正については以下のページをご参考ください。

参照:厚生労働省 労働者災害補償保険法の改正について

雇用保険

雇用保険は、離職した労働者の生活や雇用の支援を目的とした保険制度です。被保険者は、一定の条件を満たしている場合のみ、失業時や育児、介護などで休業しなければならないときの生活の保障やキャリアアップ・再就職の支援などを受けられます。

雇用保険の加入条件

雇用保険に加入するには以下の2つの条件を満たしている必要があります。

  • 週20時間以上の勤務
  • 31日以上の雇用が見込まれる

雇用保険料

業種ごとに定められた保険料率にもとづき計算された雇用保険料を、事業主と労働者が業種ごとに定められた割合で負担します。

雇用保険の給付

被保険者が失業したりや解雇されたりした場合に支給される「基本手当」の受給には、次の要件を満たす必要があります。

  • 年齢:年齢65歳未満。
  • 受給資格期間:離職の日以前の2年間に被保険者期間が通算12か月以上、解雇の場合は1年間に通算6か月以上が必要。
  • 失業の認定:公共職業安定所(ハローワーク)で求職の申し込みと失業の認定を受けることで、この日が受給資格決定日になります。
  • 待機期間:受給資格決定日から7日間は待期期間となり、基本手当は支給されません。自己都合で退職した場合は、待期期間の7日間に加えて2か月間は基本手当が支給されないので注意してください。

基本手当が給付される日数のことを「所定給付日数」といい、給付される日数は算定基礎期間(被保険者であった期間)や離職時の年齢、離職の理由などによって異なります。

基本手当を受けることができる期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。受給期間が過ぎると、所定給付日数が残っていても基本手当は支給されません。

妊娠や出産、育児、介護などの理由で30日以上就業できない場合は、その期間(最長3年)が受給期間に加算されます。

ダブルワークでも雇用保険の加入は1カ所のみ

ダブルワーカーの方が勤務している2か所以上の会社で加入条件を満たしていても、雇用保険に加入できるのは1カ所のみですので、どちらか一方の事業所を選んで加入することになります

雇用保険に加入している会社をやめた場合は、もう1つの勤め先にその件を伝え、再加入の手続きを忘れずに行いましょう。

基本手当受給のタイミングに気をつけよう

離職のときだけではなく、雇用保険に加入している会社での労働時間が週20時間未満となると、資格喪失の手続きとともに離職票の発行ができるため、基本手当の給付を受けることができます。

しかし、労働時間が減ったとはいえ、まだ働いているということで受給を開始しないまま受給期間(原則1年)を過ぎてしまうと、給付を受ける権利を失ってしまいますので注意が必要です。

待期期間中の労働時間は1日4時間未満、週20時間未満にする

ダブルワークの方が雇用保険に加入している会社を辞める、あるいは労働時間が週20時間未満になり基本手当を受給する場合は、失業状態を証明するため待期期間(7日間)は働いてはいけません。

もし働いてしまうと、その翌日から新たに7日間の待期期間が始まり、失業状態が確認できるまでは手当を受け取ることができなくなります。

副業をしながら基本手当を受けるためには、副業を1日4時間以内、週に20時間未満にする必要があります。

理由は、1日4時間以上の労働は「就職または就労」、1日4時間未満は「内職または手伝い」とみなされるからです。同様に、週に20時間以上働くと再就職したとみなされるため、労働時間を週に20時間未満にする必要もあるのです。

就職の状態であるかどうかの確認・判断は各ハローワークで行われているので、自分で判断する前に管轄のハローワークで確認することをおすすめします。

副業によって得た賃金の額によっては、基本手当が減額あるいは支給停止になることもあり得ます。基本手当を受けられる労働時間については、下記のページをご参考ください。

参照:厚生労働省 Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

不正受給はペナルティの対象に

基本手当を受給しながら、実際には副業を行っていた(1日4時間以上、週20時間以上働いた)など不正受給とみなされた場合、不正受給した金額に受給した倍の額の金額を納付するペナルティを課されますので、ダブルワーカーの方は特に注意しましょう

例えば、100万円の基本手当を不正受給した場合、不正受給した100万円とその倍の金額200万円の合計300万円を請求されることになります。

不正受給した場合の罰則については下記のページをご参考ください。

参照:大阪労働局 不正受給について

ダブルワークをするなら被保険者期間を意識した働き方をしよう

雇用保険を受給する条件の一つである被保険者期間を満たすためには、一定期間会社に在籍しているだけでは不十分です。なぜなら、被保険者期間として計算されるためには、1カ月当たり11日以上働いていなければならないためです。

ダブルワーカーとして2つ以上の会社で働いている場合、その両方で毎月11日以上働き続けるのは現実的ではないかもしれません。

しかし、雇用保険の改正法により令和2年8月1日から、1ヶ月に11日間働けない場合でも、月80時間以上働けばその月を被保険者期間に含めてよいことになりました。労働時間8時間を10日、あるいは4時間を20日といった働き方でも、被保険者期間として算定されます。

被保険者期間については、下記のページをご参考ください

参照:厚生労働省 雇用保険制度

社会保険(健康保険・厚生年金保険)

社会保険には、「健康保険」と「厚生年金保険」があります。

「健康保険」は、会社員や公務員とその被扶養者が加入する公的医療保険です。医療機関を利用する際の医療費の負担の軽減や、出産・育児支援の給付、埋葬料などの給付が受けられます。

「厚生年金保険」は、民間企業に勤める会社員や公務員などが加入する年金制度です。基礎年金に厚生年金が加算されるため、厚生年金に加入している期間が長いほど、将来受け取れる年金額が増えるというメリットがあります。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入条件 

加入のためには、以下の2つの条件を満たしている必要があります。

  • 勤務している会社が社会保険の適用事業所であること
  • 1ヶ月または1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上であること

あるいは以下の5つの条件をすべて満たすことでも加入できます。

  1. 週の労働時間が20時間以上
  2. 賃金金額が月8万8千円 (年収 106万円 )以上
  3. 1年以上継続して雇われている又は見込みがある
  4. 学生以外
  5. 社会保険の対象となる従業員規模が501人以上の会社に勤務している(平成29年4月から上記の1~4の条件を満たし、社会保険の適用事業所と労働者が合意すれば、従業員の規模に関係なく社会保険に加入できるようになりました)

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被扶養者

被保険者の収入により生計を維持されている配偶者、子、孫、兄弟姉妹、またそれ以外の三親等内の親族は、被扶養者として社会保険に加入できます。被扶養者には年齢や障害の有無に応じて、一定の収入制限があります。

健康保険料

健康保険料は、標準報酬月額(月給の平均)に保険料率を乗じて決まります。保険料は事業主と被保険者で折半、あるいは組合規約で合意した負担割合を納めます。

保険料には、健康保険事業に関わる保険料と、40歳以上65歳未満の人が払う介護保険料(全国一律)があります。

厚生年金保険料

厚生年金保険料は、標準報酬月額(月給の平均)をもとに計算され徴収されます。被保険者と事業者が折半して保険料を負担します。

健康保険の給付

被保険者は、医療機関での診察、投薬、手術、入院などを一定の自己負担で受けることができます。そのほか、業務外の事由による負傷や疾病のため、仕事ができない場合の傷病手当金や出産手当金、埋葬料などの給付が受けられます。

健康保険には、国民健康保険にはない疾病手当金と出産手当金の給付があり、月収の約3分の2の補償を受けられます。

厚生年金保険の給付

厚生年金保険の被保険者は、以下の条件を満たすことで65歳から老齢厚生年金を受け取ることができます。

  • 老齢基礎年金受給資格期間(国民年金、厚生年金、共済組合の保険料を納めた期間や加入者であった期間)が10年以上
  • 厚生年金保険の被保険者期間が1ヶ月以上

厚生年金の被保険者は、老齢基礎年金(国民年金)に加えて、加入していた期間に応じて増額される老齢厚生年金を受け取れます。

他にも、障害状態になった場合に受け取れる「障害厚生年金」、被保険者が死亡したときに遺族に支給される「遺族厚生年金」などがあります。

ダブルワーカーは2ヵ所以上の会社で社会保険は加入できる

ダブルワークの方が勤めている2か所の会社のどちらでも社会保険加入の条件を満たしている場合、その両方で社会保険に加入することができます。

基本的に社会保険加入の手続きは事業主が行いますが、2ヵ所以上の会社で社会保険に加入する場合は、従業員本人が「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」を作成し、年金事務所(健康保険組合に加入の場合は健康保険組合にも)に提出します。

また、「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を事業所が提出している場合もあります。勤め先が社会保険の適用事業者かどうかを確認し、必要な手続きを進められるよう、事業所や提出先の年金事務所、健康保険組合と連携しましょう。

2つの会社で社会保険に加入した場合、健康保険証はメインの会社の保険者として1枚のみ発行されます。

「健康保険・厚生年金保険 所属選択・二以上事業所勤務届」記入例については、下記のページをご参考ください。

参照:日本年金機構 複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き

扶養家族の収入に注意する

働いている被扶養者が社会保険加入の条件を満たすと、扶養から外れることになります。

例えば、夫の社会保険の扶養に入っていた妻が、勤め先で社会保険加入の条件を満たし加入すると、夫の扶養から外れます。

結果として妻の給与から毎月社会保険料が引かれる、夫が配偶者控除を受けられなくなるなど、支出が増えることが予想されます。社会保険に加入せずに働きたい方は、条件を満たさないように注意しましょう。

被扶養者の限度収入が60歳以上、または障害者である場合は180万円未満、60歳未満の場合は130万円未満となっており、この条件を満たしていないと扶養から外れてしまいます。

2年間は自己負担で健康保険を継続できる「任意継続被保険者制度」

会社を辞めるなどして社会保険から脱退しても、「任意継続被保険者制度」を利用して保険料を全額自己負担することで、2年間継続して健康保険に加入することができます。

保険料の負担は増えますが、健康保険から外れることで扶養に入っていた家族全員が国民健康保険に加入すると、逆に保険料が高くなる可能性があるため、保険料や社会保険のメリットなどを比較検討してみましょう。

任意継続被保険者制度利用の条件

  • 健康保険の被保険者期間が継続して2か月以上ある
  • 退職日の翌日から20日以内に申請する

任意継続保険者制度については、下記のページをご参考ください。

参照:全国健康保険協会 任意継続とは

ダブルワークの方も万が一に備えて保険に加入しておきましょう

保険に加入すると毎月の給与から保険料が差し引かれ、手取りが少なくなることを気にする方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、労働災害補償保険の保険料は事業主が全額負担することになっており、雇用保険や健康保険・厚生年金保険の保険料も労働者が全額を負担する必要はありません。

保険に加入していれば、思わぬ事故や病気で働けなくなったときや、育児・介護で思うように働けないときに支援が受けられます。また、老後の生活の安定のためにも保険に加入しておくのが賢明でしょう。

もちろん、ダブルワークを行う方が補償を受けるためには、保険の加入条件や加入状況の確認、労働時間の調整、必要な書類の提出など、自ら率先して行動することが求められるかもしれません。

この機会に、万が一に備えて各種保険を賢く利用してみてはいかがでしょうか。

 

 

執筆者 Toshiyu

Toshiyuさんプロフィール電力関連の仕事に13年従事、その後インドネシアに移住して一年のほとんどを海外で過ごす。現在はライターとしてフリーランス・副業・複業に関する記事を執筆。自由な働き方に挑戦する読者へ役立つ情報の発信を目指しています。

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